握力がなくなるような感覚で工具を握るのも辛い
仕事は車のメカニックをされていて、常に無理な姿勢が続いて慢性的な腰痛があり、いつも腰が抜けるような感覚に怯えながら仕事をしていた。
また、手の痺れもあり、左手の中指と薬指に出るが、仕事が忙しくなってくると右手の指先も痺れる感覚がある。職業柄、重たい物を持つ機会も多いが、症状が酷い日は握力がなくなるような感覚で工具を握るのも辛い日がある。
針治療や接骨院に通っていたが、施術を受けた当日は症状が軽減するものの、翌朝には元通りになってしまうことに悩んでいたが、根本原因を解消したいという思いからカイロプラクティックを受けようと知人の紹介で来院された。
腰部の起立筋の緊張
明かな右仙腸関節の可動域制限
背部と頸部の緊張
レントゲンの評価では、腰椎5番の椎間板の段階はD4レベルと慢性的であった。5~10年以上、慢性的に負荷がかかっていたと考えられ、腰の筋肉の緊張や右骨盤の明らかな可動域制限なども確認できた。 体表温度検査では、骨盤と首が顕著に現れた。そのため、レントゲン評価も加味して、初期集中期(最初の1カ月)の段階では週2回のケアを提案したが、仕事の関係上で週1回の来院ケアから開始した。
初回の検査では腰にピキッと刺すような鋭い痛みがあり、少し前かがみになるだけで腰が抜けてしまうような感覚があった。ケアを始めてから1週後(2回目のアジャスト)には、それまでのような腰がピキッとなる痛みは消失し、腰全体がじわーっとするような鈍痛に変わった。
また、腰の左側の筋緊張はなくなっていたが、右腰の筋肉の緊張や右骨盤の可動域制限は変わらず確認された。 4週後(4回目のアジャスト)には、腰の痛みはほとんどなくなり、右骨盤の可動域制限にも改善が見られた。5週後(5回目のアジャスト)には、腰の不安はまったくなくなり、仕事にも支障は出なくなった。 この頃には手の痺れも日常生活では気にならなくなっていた。
しかし、仕事で業務が忙しくなると手の痺れに繋がる為、現在は2週間に1度のペースに間隔を広げてカイロプラクティック・ケアを続けている。
今回の腰痛の原因は、長時間無理な姿勢での業務により腰の椎間板に捻じりが加わり、さらに右骨盤の可動域制限から歩行時にも腰の椎間板に負担が掛かり続けていたと考えられる。その結果、腰や骨盤の神経機能に異常をきたし、腰の痛みとなって症状が出たものと考察した。レントゲンの評価では、椎間板の段階は慢性的なD4という評価とした。
検査により腰の椎間板に負担を掛けていた根本原因は、骨盤右側の可動域制限と判断し、まずは骨盤へのアジャストメントを施した。骨盤が安定した後、腰へのアジャストメントでサブラクセーションが取り除かれ、腰や骨盤の神経機能が正常に働き、体の情報が脳へ正しく届いたことで改善に繋がったと考えられる。
また骨盤が安定したことで、脊柱(背骨)全体のバランスも整い、手の痺れの変化にも大きな影響があったと考えられる。体表温度検査では、首と骨盤で温度の誤差が顕著に見られた。
どちらも副交感神経が関係しているので、自律神経のバランスも乱れていると考えた。今回のように手の痺れが左右に移動するケースに関しては、単純な筋骨格系の問題だけではなく、自律神経の乱れからホルモンバランスの異常による影響も考えられる。
執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。2007年から2016年の間、某大手運送会社で統括運行管理者として勤務。その中で遭遇した数多くの事故を通じて、命の尊さや体調管理の重要性と向き合う。歩けないほどの腰痛に見舞われるが、カイロプラクティックを受け改善。カイロプラクティックを学ぶことを決意しシオカワスクール入学にする。現在は塩川カイロプラクティック治療室で副院長として施術を担当し、地元である神奈川県藤沢市での施術も行っている。また48年続くシオカワスクールでは講師/インストラクターを担当し、後任の育成にも力を入れて活動している。